スポーツプレックス・ジャパン顧問医・青野治朗氏は、日本フィットネス産業協会の依頼を受けて「運動とメタボリックシンドローム」と題したセミナーを全国主要都市9箇所で行っています。今回はそのセミナーをレポートします。
青野医師の専門は内科・循環器で、スポーツ医でもあります。現在、スポーツプレックス東松原に付帯する「けやきクリニック」理事長 兼 メタボリックシンドローム研究所所長を務めています。自身も運動を続ける青野医師は、クスリに頼らず運動で生活習慣病を予防・改善する療法の実践と普及に日々力を注いでいます。日本フィットネス産業協会からの講演依頼もその実績に基づくものです。
日本人の40歳〜74歳男性の2人に1人、女性では5人に1人がメタボリックシンドロームと言われています。また、メタボリックシンドローム(以下「メタボ」)は生活習慣病に直結する要因としてクローズアップされ、世間一般に広く知れ渡りました。厚生科学審議会地域保健促進栄養部会において「1に運動、2に栄養 しっかり禁煙 最後にクスリ」の標語の下、国民の健康の維持・促進生活習慣病予防を目的とした望ましい身体活動および体力の基準を示すために「健康づくりのための運動所要量」も改定されました。平成20 年4 月より医療保険者は加入者に対し「特定健康診査」・「特定保健指導」が義務化されます。(この義務は、医療機関や国民が負うのではなく、医療保険者が負うことになります。)国も本腰を入れて国民の健康管理を推進する動きになっています。日本の死因ベスト3は悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患ですが、心疾患・脳血管疾患で全体の約30%も占めています。その要因は動脈硬化症ですが、さらにその元凶がメタボ、内臓脂肪の蓄積なのです。
倹約遺伝子仮説
人類は飢餓の時代、食事にありつけない状態でも生き延びられるよう、脂肪細胞にエネルギーを蓄えておく仕組みを遺伝子に情報として持つようになりました。現代のわれわれも祖先から受け継いだこの遺伝子を持っています。しかし、飽食環境の現代人には、かえって適応しにくい状態になってしまいました(特にモンゴル系の人種は適応しにくいようです)。
肥満の原因
脂肪組織には、脂肪をためこむ白色細胞と脂肪を燃やして熱に変える褐色細胞とがあります。この2種類の細胞にノルアドレナリンというホルモンが作用すると白色細胞は脂肪を分解し血中に放出し、それを褐色細胞が取り込んで燃やします。しかしこのホルモンを作る遺伝子に異常があると両細胞ともうまく機能せず、脂肪の処理が滞って肥満になります。
脂肪細胞の働きは色々研究された結果、余ったエネルギーを中性脂肪として蓄えることだけではなく、活性物質も分泌し代謝の働きに関与することもわかってきました。
特に肥満と関連する活性物質の分泌の中にレプチンというたんぱく質が発見されました。レプチンはどうも脂肪の貯蓄量を左右するらしく、この働きが著しく悪いと太ることがわかりました。余ったエネルギーが脂肪細胞に貯留し始めると、ノルアドレナリンが分泌され、脳の視床下部に作用し食行動を中止させる働きをします。
しかし、ノルアドレナリンを受け止めるアドレナリンレセプター(受容体)に何らかの異常がある場合、食行動を中止させるレプチンを分泌しても食行動を中止しなくなってしまう状態になり、病名では「高レプチン血症」と言われています。
いくら痩せたくとも、脂肪蓄積に関与する遺伝子に異常がある場合いくら努力しても結果が伴わないこともあります。つまり病気である以上医学的な治療を優先し、同時に生活習慣のコントロール(運動習慣と食行動の改善)を図りながら改善しない限り肥満を解消することはできないのです。
レプチンの状況は簡単に採血をすれば判明しますので、心配な方は一度チェックを受けることが良いでしょう。
メタボの改善には肥満の解消ですが、運動不足の解消は必須要素です。
運動の内臓脂肪減少効果
運動不足を解消するには何をすればよいのでしょうか? 身体の中に余分なエネルギーを蓄えているとするのであればそれを使ってあげることが一番です。身体を動かしエネルギーを使うことです。エネルギーを使うのに適しているのは全身運動といわれています。全身運動(有酸素運動)の条件は、全身性、継続性、有酸素性です。しかしどのくらいやれば良いのか、どのくらいの強度で行えばよいのかは分かりづらいものです。
ここで理解していただきたいのは一度に沢山運動を行っても続かなくては意味がないということです。少しの量でも日々行うことが一番、そして無理をせず自分で「楽である」と感じる程度(これを自覚的運動強度といいます)の速さで歩く、またはジョギングすることです。数値的に言いますと100〜110/分くらいの心拍数で十分です。最低でも週に2〜3回続けることで体は変化してきます。
メタボの元凶は内臓脂肪の蓄積です。内臓脂肪は付きやすく、とりやすいものですから継続的に全身運動を行うことで取り除くことができます。第2部ではその例をいくつかみてみましょう。

| 【症例1】 |
減量したことによりクスリ量の変化
47歳男性 3か月 3sの減量
期間=3か月
運動=電車通勤を自転車通勤に変更
投薬=ザイロック200→100rに リピトール→10→5ミリグラム
肝機能 脂質系数値に変化 |
体重を3s減らした結果、検査値項目の値が、下がりすぎるため、ザイロック(尿酸を押さえる働き)、リピトール(中性脂肪をコントロールする働き)の量を減少する事ができた。
合わせて肝機能も正常範囲値へと推移
| 【症例2】 |
54歳女性 3か月 3sの減量
期間=3か月
運動=水中ウオーキング20〜30分/回 スイミング20分/回 3〜4回/週 |
症例1と同様に体重が約3s落ちたことにより血管拡張剤(降圧剤)のアムロジンが減った。
| 【症例3】 |
44歳女性 3か月 3kg・3cmの減量
期間=3か月
運動=トレッドミル&バイク 平均45分、筋力運動6種目程度
75kg→72s ウエスト98.3cm→95.2cm
中性脂肪345r/dl→174r/dl |
| 【症例4】 |
36歳男性 6か月 7s・6cmの減量
期間=6か月
76s→69s ウエスト90.4cm→83.7cm
中性脂肪710r/dl→97r/dl 善玉38r/dl→46r/dl
運動=有酸素運動110分/回・筋力運動6種目程度2〜3セット/回 |
 クスリでは値を上げることはできないメタボ関連指標「善玉コレステロール」が上昇傾向を示している。善玉コレステロールを改善するには運動しか方法はないとされている。
3か月 −3s −3cmで数値が改善
メタボの改善テーマは肥満をなくし脂質代謝を改善、将来的な脂質異常症や高血圧を予防改善し、心筋梗塞、脳梗塞への予防を図ることにあります。以上の症例からもわかるように、3か月 −3s −3cmでも医学的視点、血液検査結果の値はかなり改善していることが分かります。
しかし、クスリを飲み続けてきた方があまりにも血液検査の数値が下がってきたのでクスリを減らすよう勧めたが、クスリ依存症になっておりクスリを減らされることにより逆に不安に駆られたというケースもあるようです。クスリを一度飲んでしまうと一生のみ続けなくてはならないと言われていましたが、個人差はありますが、運動習慣をつけ食習慣を改善することでクスリを飲まなくても良い身体になることが出来るのではないでしょうか。
運動の危険性
2007年8月にある地方自治体の職員の方がジョギング中に突然死しました。47歳、男性、身長175cm、体重82kg、ウエスト100cm、死因は虚血性心不全でした。自治体職員が模範となり市民に対してメタボ対策を啓蒙している最中でのアクシデントです。数値的な部分から見るとメタボ予備群です。詳細データが明らかでありませんので推測ですが、虚血性心不全は十分な酸素が心臓に届かず動かなくなる状況ですから心臓を取巻く冠動脈に動脈硬化があったかもしれません。8月の夏場での運動ということもあり、水分補給が十分に行われず血液の粘性が高まり血液の流れが悪くなったなど、死に至らしめた要因は多々あったように見受けられます。
事前チェックで安全な運動を
しかし、予防ができなかったのでしょうか? 運動は「諸刃の剣」です。運動の効果は高いが万能薬ではありません。運動する方の身体的状況によっては運動を避けた方が良い場合もあります。今回のメタボ評価基準は「高額医療機器を使わなくてもご自分である程度推測ができ点が一番良いところ」です。血液検査結果と一本の巻尺があればそれでOKです。メタボ基準に照らして測定した結果、条件に当てはまる項目があれば、血圧はどうか、脂質系はどうか正式に検査を受けるとか、医師に相談した上で運動を始めることが必要でしょう。予防・改善のために始めた運動で身体を壊す、あるいは亡くなることは本末転倒です。事前の健康チェックや運動の正しい知識などの情報を仕入れ、安全性を確保してから始めることが一番です。
3か月の意味
無理して短い期間で急激に体重を落とすことは危険がつきまとい、リバウンドに陥りやすいのです。計画的かつ医科学的に行うことで、安全で効果的な予防と改善ができます。誤った知識や自己流は事故の元です。
人の身体は新陳代謝(身体の古い細胞が新しい細胞へと生まれ変わること)が正しく行われていれば3か月で生まれ変わります。しかし、新陳代謝が正常に行われないと、古い細胞が身体に蓄積されてしまいます。新陳代謝が低下すると、ダイエットをしてもやせない、手入れをしても肌が良くならない、疲れが取れない、体調を崩しやすいなどの症状が出てしまい、内臓の細胞も古くなり生活習慣病などもひきおこす原因になります。
3か月のサイクルで無理のない運動をすることで、新陳代謝を促し、コレステロールや血糖などコントロールし、生活習慣病にならないようメタボのうちに身体をメンテナンスしておくことが重要です。
青野医師は、定期的なメンテナンスとチェックは大切でありそれらを総合的に兼ね備えている施設で運動やボディケアをすることが望ましいとし、スポーツプレックスでは自分が監修したメディカルチェックインタビューや運動相談システム、クリニックを付帯させたことによる検査を十分に活用することで、メタボリックシンドロームの予防・改善が可能になるとしています。近くにスポーツ医が存在するクリニックの活用することを推奨しています。
スポーツプレックスは全店13店舗の内6店舗にクリニックが付帯しています。大いにクリニックを利用してメタボ対策に努めましょう。一番怖いのは自覚症状がないままメタボになりかつ生活習慣病に進行することです。定期的にクラブでのインボディ測定、メジャーによる腹囲計測をして基準を超えていた場合は要注意、すぐに医師のチェックを受け、手を打ちましょう。今皆様はそれができる環境にあります。
スポーツプレックスが提供する安全・効果的な運動のためのサービス
| ポイント |
何をすれば |
どこで |
| 身体的健康状況の確認 |
既往歴・現況確認 |
各店舗(メディフィットシステム) |
| 体内環境の確認 |
レプチンをはじめとする各種検査
心機能のチェック(負荷心電図やホルター)
運動指示書の発行 |
クリニックにて受診可 |
| 正しい運動の仕方 |
トレーナーカウンセリング |
各店舗 |
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