高血圧に対する運動療法は有酸素系運動、すなわち、ウォーキングやジョギング、エアロバイクなどを行うのが一般的です。レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)により血圧が下がるとの報告もありますが、筋力トレーニングはやり方を誤るとトレーニング中、血圧が過度に上昇し、いっそう危険な状態になるので、初めて運動療法に取り組む場合にはあまりお勧めできません。
さて、有酸素運動を続けた場合、血圧はどの位下がるのでしょうか? これまで発表された研究成績を総合して統計解析してみると、高血圧者による降圧効果は収縮期血圧で10mmHg前後, 拡張期血圧で8mmHg前後、正常血圧者では、降圧幅はもう少し小さく、収縮期血圧で3mmHg, 拡張期血圧で2mmHg前後です。 うれしいことに正常血圧者に比べ、高血圧者の方が降圧効果は大きい様です。ただ、いずれにしても値自体はそれほど大きなものではなく、“こんなもんか”とお思いになった方も多いかもしれません。しかし、血圧が2mmHg下がる毎に脳卒中の発症リスクは15%前後下がるといわれるので、8-10mmHg血圧が下がることの効果は大きいのです。
また、上に述べた数値はあくまで平均値ですから、症例によってはさらに大きな降圧が見られる場合もあります。 とはいえ、運動を続ければ薬は不要かというとそういうわけでもなく、最も降圧がみられた研究でも収縮期血圧で20mmHg以下ですから運動療法にもある程度限界があるのです。したがって収縮期血圧180mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上となるような重症高血圧の場合は運動だけで正常化するのはちょっと無理がありますね。
運動療法だけに固執することは時に危険であり、薬物療法への移行や併用を受け入れることも大切です。運動療法の具体的やり方ですが、強い運動である必要はなく、ウォーキング(速歩)などのマイルドな運動でも降圧効果が十分に期待出来ることは多くの研究が証明しています。1週間の総量としては90分〜100分(つまり1日30分であれば1日おきくらい)が確実に効果が出る最低限の運動量です。
血圧と運動に関しては今日までに多くの研究があり、次回はその中からいくつか興味深いものを御紹介しましょう。
経歴 1987年 慶應義塾大学医学部卒 同内科、老年科を経て1995年より現職 生活習慣病や動脈硬化危険因子に対する運動療法が専門。