運動で消費エネルギーを増やすことは、減量の手段として有効であることに疑いの余地はありません。実際、多くの臨床研究の結果を総合し、横軸に1週 間あたりのエネルギー消費量(運動量によって消費するエネルギー量)、縦軸に体重の変化量をとると、両者はきれに負の相関を示します。すなわち、1週間あ たりのエネルギー消費量が多くなればなるほど、体重の減少も大きいのです。運動により負のエネルギーバランスがつくり出され、これが確実に体重減少につな がるわけです。
また、運動を続けることで、筋肉量が増加し、基礎代謝が8〜10%程度増えるとされます。さらに運動後はしばらくの 間、身体の代謝が増加し、エネルギー消費量が増えることも報告されています。運動に伴う体重減少のメカニズムは、運動そのものによるエネルギー消費に加 え、これら運動以外による要因が総合的に作用していることがお分かりいただけたと思います。
しかし、基礎代謝の上昇にしても、運動 後のエネルギー消費にしても、ある程度、強い運動を行わないとその効果が期待できません。実際、臨床研究で指示されている1週間あたりの運動量は 1000〜2000kcal/週であることが多く、これはかなりの努力を必要とする運動量であることも事実です。
例えば、有酸素運動の代表例であるジョギングを週3回行うことで、1000kcal/週の消費エネルギーを確保しようとするなら、単純に計算しても 1回のジョギングで330kal以上を消費しなくてはなりません。それなりにフルマラソンを走る時のペースとして良く言われるのが“キロ5分”(時速 12km)ですが、このペースで走ったとして、30分前後はかかります。実際には運動をはじめたばかりの人はこのペースではとても走れませんし、これを週 3回となると、そう誰でもできるというものではありません。以前から提唱さえていた“30分程度の有酸素運動を1週間に3回”という運動処方は研究で得ら れたデータに則したものでしたが、現実には万人に受け入れられるものではありませんでした。
経歴 1987年 慶應義塾大学医学部卒 同内科、老年科を経て1995年より現職 生活習慣病や動脈硬化危険因子に対する運動療法が専門。